存在価値を見失う
組織のパフォーマンスを下げるものは一体何か?
それは、間違いなく組織の中で存在価値を見失うことだと思います。
僕は40代前半で、事実上の降格を経験しました。
職位はなくなり、部下もいなくなりました。
除草がメイン業務となりました。
ピーク時に比べ、年収も約25%ダウンしました。
人事異動による業務内容の変更や収入減よりも、はるかにつらかったことがあります。
それは、拭い去ることのできない
降格
という事実でした。
降格により、組織の中での
存在価値
を完全に見失ってしまったのです。
降格による喪失感は、今までに経験したことのないものでした。
・もはや会社は自分を必要としていない
・恥をさらしてまで会社に残りたくはない
・なぜここまで無能者扱いされなければならないのか
頭の中で1日中リピートしていました。
モチベーションは完全に喪失しました。
同時に自己肯定感も喪失してしまいました。
「低下」は再浮上の可能性を残します。
「喪失」はゼロの状態です。
「喪失」は「低下」よりもはるかに回復までの時間が必要です。
結局、ある上司から「様子がおかしい」と言われ、心療内科受診を勧められました。
そして、適応障害との診断を受けたのです。
人事部的に、従業員のうつや適応障害はめずらしいものではないでしょう。
評価ダウンや降格に伴う従業員のメンタルヘルス悪化は、あくまで自己責任として扱われます。
うつや適応障害を発症する従業員が一定割合いるのは、当然でありやむをえないという発想です。
メンタルヘルス相談窓口を設けている企業も数多くあります。
僕が働いている会社にも数年前に設置されました。
ただ、従業員のメンタルヘルス悪化をあくまで自己責任と捉え、その解決を外部委託する姿勢には疑問を持っています。
メンタルヘルス悪化が業務にある以上、外部に相談したところで根本解決にはつながらないからです。
実は、心療内科受診前に一度だけ外部の相談窓口に相談したことがあります。
回答はこのような内容でした。
・休息が必要ですね
・休みの日に気分転換してみましょう
・もう少し視野を広げてみては?
率直に言って、何の問題解決にもなりませんでした。
外部窓口である以上、業務や組織の制度に踏み込んだ話をするのは困難なのでしょう。
それにしても、精神的に病んでしまう社員が1人また1人と増えていくのは、組織全体のパフォーマンスにとってプラスなのでしょうか?
僕は、これほどの損失はないと考えています。
日々会社で仕事をしていると、このような言葉をよく目にします。
・もっと前向きに!
・もっと積極的に!
・スピード感を持って!
そのとおりだと思いますし、否定するつもりはありません。
ただ、モチベーションや自己肯定感が喪失した状態でこの感覚を持つのは難しいですよね。
安易な降格は、従業員の存在価値を見失うという点において組織のパフォーマンスを下げる最低の人事制度なのです。